「ネットで初めて見つけた」方から100万円以上の寄付をいただき、驚いた経験
オンラインから寄付を集めるときのチャネルとして、無視できないのが検索エンジンです。
あなたも、何か買い物をしたり調べものをしたりするときには、「ググる」ことが多いでしょう。
それと同様に、寄付先を探すときにも検索をする方が多いのです。
私がかつて在籍した認定NPO法人カタリバでは、責任者を務めていた2011-14年当時、集客のメインは検索エンジン。
「被災地のためにできることを探して、検索しました」
「ネットで調べたら、ちゃんと活動してそうな団体と思って」
そういった方々が私たちのWEBサイトを見つけて、寄付をしてくださっていました。
一般の個人の方々からはもちろん、検索経由で多かったのは企業からの問い合わせ。
営業のため訪問しても、ご担当者は既に私たちの活動について調べてくれていたため、高い確率で成約しました。
また、遺贈や相続財産の寄付なども、検索エンジン経由でご相談をいただいたケースが多くあります。
1回で数十万円、なかには100万円以上のご支援を、「ネットで初めて見つけました」という寄付者の方からいただいたことも少なからずあります。
検索エンジン経由の寄付はソーシャルメディア経由と比べて、「平均単価が4倍以上に高かった」というデータが出たこともありました。
「日本国内の子ども支援で良い活動をしている団体を見つけて、寄付したい」
「(チャリティイベントで集まった資金など)まとまった資金が手元にある」
といったように支援先を能動的に探している方々は、「団体からお願いのメールがきて」「Facebookで見かけて共感して」など受動的に支援する方と比べて、金額も必然的にも高くなるのかもしれないと推測しています。
では、検索エンジンであなたの団体を見つけてもらうために、どのような施策をとればよいでしょうか?
GoogleAdGrantsの活用法で、間違ってはいけないこと
NPOにとって馴染みがあるのが「Google Ad Grants」(以後Ad Grants)。
Google Adwords(そのうち検索連動型広告)を無料で活用させてもらえるという非営利団体向けプログラムで、導入している団体も多いでしょう。
このAd Grantsを寄付獲得のために活用しようと、私自身で管理画面にログインして運用したり、広告代理店に運用をお願いしたりなどさまざまに工夫してみましたが、結局うまくはいきませんでした。
寄付のコンバージョンは、多い月でも10件に届くことはなかったのです。
Ad Grantsを活用している団体に聞いても、同じように「寄付には直接は結びつかなかった」という声をよく伺います。
AdGrantsに存在するのが「2ドルの壁」です。
広告の表示順位は入札価格などによって決定しますが、AdGrantsで入札できるのは最高で2ドル(約200円)まで。
「寄付」や「募金」など含まれるキーワードは、Ad Grants以外の通常のアカウントも導入しているNGO/NPOによって、さらに高い価格で入札されていることが多くあります。
検索キーワードでは一般的に、今すぐにコンバージョンに結びつく顕在ニーズをとらえたキーワードと、「まずは知りたい」という方のための潜在ニーズにもとづいたキーワードに分かれます。
前者の寄付につながる「顕在ワード」は、Ad Grantsによって露出するのが非常に難しいのです。
誤解のないように伝えると、Ad GrantsはNPO/NGOの活動や取り組む社会課題をたくさんの方に、しかも無料で知っていただく機会を持てる、素晴らしいプログラムです。
ただし、Ad Grantsで集客できるのは、「2ドルの壁」の範囲内で露出できるキーワード。
短期的なコンバージョンは期待しすぎず、活動を広く知ってもらうための広報手段として活用するのをお薦めしています。
施策1:有料でも、リスティング広告に出稿する意味
では、どうすれば検索エンジンから集客すればよいのでしょうか?
即効性が高いのが、リスティング広告。
つまり、GoogleAdwordsやYahoo!プロモーション広告などの通常のアカウントを開設して、広告費を払って集客する方法です。
アカウントを開設したすぐ後から、「2ドルの壁」を超えてコンバージョンを狙いやすいキーワードに出稿できます。
もちろん、「広告にお金は出せない・・」という団体もあるかもしれません。
その場合は、「有料の広告はダメ」と決める前に、前々回に書いた「広告投資の回収モデル」についての記事を読んでいただければと思います。
リスティング広告についてのノウハウは、ビジネスの世界で多くが語られているので、本稿では割愛させていただきます。
初心者の方なら、たとえば「リスティング広告成功の法則」という本がオススメです。
(寄付という文脈では、広告文など一部はビジネスとは違ったノウハウが必要になりますが)
ただし、リスティング広告の運用には、専門的な知識が必要です。
そのため広告代理店に運用を委託するのが一般的ですが、そのスキルはまちまちです。
スキルが低い代理店に委託しても、費用ばかりかかって、全くコンバージョンを獲得できないということもあります。
逆に、スキルの高い代理店は、「広告費が50万円以上/月以下の案件は受けない」といった制限を設けている会社もあります。
高額の広告費を出せない場合は、プロボノなどでサポートしてくださる方を見つけるか、自分自身で勉強して運用するなどがよいかもしれません。
施策2:自然検索から、無料でアクセスを集める
即効性には劣るものの費用対効果が良いのが、自然検索でアクセスを集める方法。
いわゆる「SEO」と言われる分野です。
先ほど例に挙げた認定NPO法人カタリバでは、東日本大震災で被災した子供たちのための教育活動をしており、「被災地 支援」や「震災 寄付」といった検索キーワードで、上位に表示していました。
このようなキーワードを叩いた多くの方々から寄付をいただいてきたことは、先に述べた通りです。
SEOというと、「専門知識がないから、できない」と敬遠する方もいらっしゃいます。
たしかに競争の激しいビジネスの世界では、高度なテクニックが必要になることもありますが、NPO/NGOが情報発信する分野では必ずしもそうではありません。
一定期間の活動実績やWEBサイト上で発信した情報の質と量がある団体ならば、専門分野では上位表示をしている事例も多いようです。
Googleは、検索ユーザーを欺くようなテクニックを駆使したサイトではなく、ユーザーにとって有益な情報を、適切なルールに則って発信しているサイトを優先する、と公言しています。
SEOについても、ビジネスの分野で多くが語られているのでここでは詳述しませんが、初心者の方には「10年つかえるSEOの基本」という本がお薦めです。
自分たちが活動している分野・テーマのキーワードと、「寄付」「募金」「ボランティア」「支援」といったキーワードを掛け合わせて検索したときには、検索結果の1ページ目に出てくるのを目指しましょう。
「どのようなキーワードが?」「月に何回検索されているか?」は、Adwords(Ad Grants含む)のアカウントを持っている方ならば、「キーワードツール」という機能を使えば調べられます。
興味のある方は、アクセスしてみてください。
「コンテンツマーケティング」は、長期的な視点で仕組みづくりを
最近バズワードのようにもてはやされている「コンテンツマーケティング」でも、この検索エンジンからの集客を主流とするケースが多いでしょう。
「オウンドメディアを開設する」「記事コンテンツでアクセスを集める」といった動きを取り入れるNPO/NGOも出てきました。
社会的な課題に取り組むNPO/NGOにとって、コンテンツマーケティングは相性が良いと言われています。
ただし、短期的な効果は期待しない方がよいかもしれません。
なぜなら、コンテンツマーケティングで集客するのは、「寄付」や「募金」などすぐにコンバージョンする「顕在ワード」ではなく、社会的課題など「潜在ワード」が多いでしょう。
また、メディアを構築してから検索エンジンに認められ、上位表示しやすくなるまでも時間がかかることもあります。
そのため、「すぐにはアクセスが集まらない」「記事は見てもらえるけど、寄付には結びつかない」といったことが起こりやすいのです。
コンテンツマーケティングを活用して、ファンドレイジングで成果を出したい場合は、すぐには寄付には至らないユーザーに、支援の必要性を認識してもらい、アクションを促すための仕組みが必要でしょう。
たとえば、あなたのサイトにアクセスしたユーザーに広告を配信する、「リマーケティング広告」。
また資料ダウンロードなどで個人情報を取得したうえで、メールなどで団体の活動を伝え支援者へと育成していく、「リードナーチャリング」の仕組みも有効かもしれません。
このように高度なマーケティング手法がセットで求められることも多いでしょう。
したがって、国内のNPO/NGOではファンドレイジングに直結する成功事例はあまり知られていないようです。
ですが、短期的に成果の出やすいリスティング広告やSEOでひととおり仕組みをつくった団体にとっては、検索エンジン経由での集客の幅を広げるために取り組む価値があるでしょう。
私自身も、この分野でチャレンジしていきたいと考えています。長くなりましたが、検索エンジンを用いたファンドレイジングについて、ひととおり述べさせていただきました。私自身もまだ経験できていないこともあるので、「うちではこんな成果が出た」といった読者の方がいらっしゃったら、ぜひお話を聞かせてください。