ファンドレイザーとは、非営利団体の資金を寄付などで募る人たち
ファンドレイザーとは、非営利団体の活動に必要な資金を、個人や企業からの寄付などで募る仕事をする人のことです。
ファンドレイザーの由来となった「ファンドレイジング」とは、「NPO/NGOや財団、大学・研究機関など非営利団体が、活動に必要な資金を募ること」です。
ファンドレイジングの仕事をする人が、すなわちファンドレイザーです。
非営利団体にはさまざまな収入源がありますが、そのうちファンドレザーが取り扱うのは、寄付や会費、助成金など対価が発生しないタイプの資金源。
貧困や迫害など人々が苦しむ社会課題や、課題が解決できた時の社会的インパクトなどを訴え、人々の善意にもとづき資金提供を呼びかけます。
ファンドレイザーが資金を募る先の非営利団体は、以下のようにさまざまです。
- NPO/NGO
- 財団法人・社団法人
- 大学・研究機関
- 文化・芸術施設
- スポーツチーム
これらの組織の内部で働く職員のほか、ファンドレイジングに必要なツールやシステムなどを提供する企業に勤める社員、あるいは業務を受託するフリーランスなども、ファンドレイザーと呼ばれます。
広義ではボランティアやインターンなどで携わる人なども、含める場合があります。
仕事内容はさまざまだが、企業でのスキルや経験を活かしやすい
ファンドレイザーといっても特定の仕事内容が決まっている訳ではなく、所属する組織や一人ひとりの担当分野によってさまざまです。
具体的な例として、いくつか紹介していきましょう。
企業や財団等向けの営業・渉外担当者
企業からCSRやSDGsに関連して寄付を受ける、財団や政府から助成金・補助金を交付されるといった案件で、ご支援の提案や団体内外の調整などを窓口として折衝します。
個人の寄付者についても、資産家・篤志家の方や遺贈・相続財産の寄付など金額が高くなりやすい案件では、担当者として同じように窓口に立つこともあります。
どのような経験や能力の方が向いているかというと‥
- 営業あるいは販売や接客など、対人コミュニケーションの業務を経験してきた方が、ファンドレイザーに転身するケースがよく見られます。
- 法人や個人は問わないものの、寄付という形がないものを提案するため、無形商材を売ってきた方と相性が良いようです。
- 寄付者の共感を形成することが大事なので、ロジカル一辺倒なタイプよりは、感情に寄り添える方や相手と関係性を構築するのに秀でた方が活躍しやすい傾向です。
法人寄付では、金銭としての寄付を受けるだけではなく、社員ボランティアの受け入れや商品・サービスとのタイアップ、プレスリリースの発信など協働をコーディネートする場合もあります。
非営利団体という特性上「営業」という言葉を使わずに、「渉外担当者」や「コーディネーター」といった名称で呼ばれる場合もあります。
クラウドファンディングやPR・広告などマーケティング担当者
個人など不特定多数の方から寄付を募るために、メディア向け広報やWEBサイトの管理・SNS運用、ダイレクトメールや会報誌の制作などを担当します。
たとえば、「クラウドファンディングで1,000万円を目標に、SNSで応援を呼びかける」「毎月1,000円からの継続寄付者を新規を獲得するため、デジタル広告を運用する」「既存の寄付者に、メールや郵送でご支援のお礼や報告をする」といった業務があります。
- 広報やマーケティングなど発信・コミュニケーションの職種を経験してきた方が、活躍する事例が見られます。
- 「人の気持ちがわかる」「表現すること・共感してもらうことが好き」といったタイプ(企画やクリエイティブを担当)のほか、「ロジカルシンキングができる」「数字に強い」タイプ(データベースや分析など担当)の両方が求められます。
- コロナ禍後には特に、デジタルマーケティングの経験をしてきた方が、重宝されやすい傾向です。
非営利団体の内部で働くほか、非営利団体向けにサービスを提供する、広告代理店や制作会社、ツールベンダーなどに就職するという2通りのキャリア形成方法があります。
営業やマーケティングだけではなく、ITシステムや経理・財務といった機能も、得られた資金を有効に活用するため、特に組織の規模が大きくなるほど重要になります。
プレイヤーとして活躍した後、民間企業のCOOにあたる「事務局長」などとして、経営・マネジメントにあたるファンドレイザーもいます。
ファンドレイザーの給料や報酬の水準は?求人の一覧もチェック
企業などで働いている方が、ファンドレイジングを仕事にするためには、「NPOや大学など非営利団体に勤務する」と「支援会社やフリーランスなど支援側として働く」の2通りがあります。
NPOや財団、大学など非営利団体の職員
非営利団体に所属するファンドレイザーの仕事内容は、「専任担当者がおらず兼務でこなす」団体から、「ファンドレイジング部門だけで30人近くおり役割が決まっている」団体まで、組織規模によっても異なります。
そんななかでも異動や兼務などによって、寄付者さんの問合せ対応からキャンペーンの企画実行まで、さまざまな業務を総合的にこなしたことがある人が多いはずです。
寄付金を使って活動する現場に近いため、受益者(=支援対象であるお子さんや困窮者の方など)や寄付者さんからの感謝の言葉に触れる機会もあります。
自分たちの手で「社会を良くしている」というやりがいを、抱きやすいでしょう。
給料は、民間企業から転職するとケースバイケースですが、6〜8割程度までは低くなる場合が多いかもしれません。
一般職員として転職する場合は、入職時の年収は300-500万以内におさまることが多くなりますが、入職後の活躍などによって管理職に昇格などすると昇給するのは、民間企業と同じです。
仕事内容や給料など具体的には、それぞれの求人をチェックしてみてください。
支援会社への転職やフリーランスも
一般にはあまり知られていませんが、広告代理店やコンサルティングファーム、決済やデータベースなどのツールベンダーなど、NPOやNGOをクライアントとしてファンドレイジングを支援する会社もあります。
デジタルマーケティングやIT、PRや企画・営業代行などを請け負っている、フリーランスの人もいます。
このような会社に転職したり個人事業主として独立したりするのも、ファンドレイザーになる方法の1つです。
仕事内容は、それぞれのサービスの専門分野で、多くのクライアントをサポートします。
団体で働く場合と比べて、専門性を深掘りして数多くの事例を経験できるのはメリットですし、それ以外の分野の全体像が見えにくいのはデメリットです。
給料や報酬は、会社や事業の収益性にもよりますが、民間企業と比べられるので非営利団体よりは高い水準になるようです。
その分、「寄付が役立っている」という実感を得づらいため、ダイレクトなやりがいを抱きづらい可能性があることは、頭に入れておきましょう。
就職に資格は必須?准認定ファンドレイザーの難易度は?
日本ファンドレイジング協会が「認定ファンドレイザー」という資格制度を設けています。
一定のファンドレイジングの知識やスキルを習得している人という”お墨付き”になります。
ただ、ファンドレイザーになるために、必ずしも資格は必要ではありません。
資格の目的は、知識を体系立てて整理したり、主体的に勉強することです。
ファンドレイザーの資格には、以下の2つがあります。
- 准認定ファンドレイザー
- 認定ファンドレイザー
2.を受験するには、有償実務経験が3年必要になりますので、初学者はまず1.を受験することになります。
1.であれば、試験日の1ヶ月くらい前から、必修研修で習ったことを復習したり、自分なりに知識の棚卸しをしたりすれば、十分に合格可能な難易度です。
実際に准認定ファンドレイザーを受験した体験記は、こちらをご覧ください。
やりがいは、「心から良いと思えること」を広められること
最後にファンドレイザーのやりがいですが、「自分自身が心から良いと思えるもの、社会に必要と思える活動を広めていけること」と私は感じています。
企業に勤めて営業やマーケティング・広報など“売る”“広める”仕事をされている方からは、「これを売っても、世の中のためになるのか?」「自分が一生をかけてやりたかったことなのか?」といった悩みを伺うことがあります。
私自身は民間企業で7年勤務した後に、NPO法人に転職しましたが、広告代理店で働いていた時にはそんなモヤモヤを抱いていました。
そんなとき、思い出したのがスティーブ・ジョブズ氏の言葉。当時新興企業だったApple社に、ペプシコーラのマーケティング責任者を入社させたと言われる口説き文句、「このまま一生、砂糖水を売り続けるのか?それとも世界を変えるチャンスをつかみたいか?」でした。
ファンドレイザーは、非営利組織においてはあくまで「裏方」です。
現場で活動するスタッフとは異なり、「困っている人のために役に立っている」という直接の実感は得られにくいかもしれません。
それでも、ファンドレイジングの仕事社会課題や活動を世の中に訴え、一人ひとりから支援をいただくたびに、「世界を少しずつ良くしている」という手応えを私は抱いてきました。
どんなに良いことをしていても、「お金がないから支援を届けられない」「活動を安定して続けられない」といったように、資金がボトルネックになっている団体も見てきました。
逆に、寄付金が集まることによって、活動をスケールして広められた事例も少なくありません。
ファンドレイザーは、社会課題を解決するための一番のボトルネックに、(非営利セクターでの経験はもちろんですが)企業など業界の外側で培った能力を活用できる仕事です。
ぜひあなたの経験やスキルを活かして、ファンドレイジングの世界に飛び込んでみてください。