オンラインでのファンドレイジングで、成功確率を高めるための3つのポイント

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インターネットを通じて寄付を広く募るためには、どうすればよいのでしょうか?WEBからの寄付獲得のためには、ビジネスのWEBマーケティングとも共通する方法論があります。NPO/NGOの経営者の方などのために、認定NPO法人カタリバでの実体験も踏まえて、オンラインでのファンドレイジングの3つのポイント(導入編)をお伝えします。

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目次

「助成金依存を脱したい」「支援者を広げたい」NPO経営者の課題を伺って

はじめまして。認定ファンドレイザーの山内悠太と申します。

「オンラインでのファンドレイジング」をテーマに、連載をさせていただくことになりました。

これから、どうぞよろしくお願いいたします。

私はいくつかのNPO法人のファンドレイジングをお手伝いしていますが、たくさんの経営者やファンドレイジング責任者の方とお会いするなかで、

  • 「WEBで活動を広く発信して、寄付を募りたい」
  • 「助成金や大口寄付への依存を脱して、マンスリーサポーターを増やしたい」
  • 「活動に参加したことがある人以外にも、支援者を広げたい」

といった課題を伺ってきました。そういった課題に対応するように、たとえば

  • ソーシャルメディアの活用法
  • クレジットカード決済の導入方法
  • WEBデザインによるブランディング

といったテーマで、NPO/NGOを対象としたセミナーや勉強会は盛んに開かれていますね。

ファンドレイジングを熱心に勉強している方は、多くいらっしゃる印象を受けています。

ところが、WEBからのファンドレイジングに成功しているNPO/NGOは多くはないでしょう。

たとえば1億円単位の寄付収入がある団体で、「新規寄付者の獲得はWEBからがメイン」という団体は数えるほどしかないように見えます。

WEBマーケティングに関するノウハウは溢れていて、各分野の専門の方からプロボノなどでサポートを受けている団体も多い。

無料で活用させてもらえる広告枠やツールも、溢れている。

それなのに、どうしてWEBから寄付を集める仕組みをつくるのは、難しいのでしょうか?

カタリバのファンドレイジング、ゼロからの立ち上げで経験したこと

申し遅れましたが、簡単に自己紹介させていただきます。

私が、「寄付」に本格的に携わることになったのは約6年前。

広告代理店から転職をして、認定NPO法人カタリバという教育NPOで2011年8月から3年間、ファンドレイジングの責任者を務めました。

それまでカタリバは、学校や行政からの収入比率が高い「事業型」のモデル。

ファンドレイジングは、ほぼゼロから立ち上げでした。

WEBサイト制作やデータベースの整備など、マーケティングの仕組みづくり。

そして、法人への営業から個人寄付者の問い合わせ対応など泥臭い仕事まで、あらゆる業務をカバーしました。

東日本大震災への復興支援の活動を始めたこともあって、寄付・会費収入は大きく増加。

2010年度の約2,600万円から、2014年度には約1億8,900万円へと伸びました。

月1,000円から支援いただくマンスリーサポーターは、5年間で約170人から約2,500人へと10倍以上に増えました。

寄付・会費収入は約8倍に増加

「どうやって寄付を集めたんですか?」
「いろんな企業を、相当営業して回ったんじゃないですか?」

よくご質問をいただきますが、実は新しい支援者を集めるにあたっては、テレアポや飛び込み訪問でのお願いといった、いわゆる“プッシュ型”はほとんど行いませんでした。

代わりに、原動力となってくれたのがWEBサイト。

ソーシャルメディアや検索エンジンなどを通じて活動を知ってもらい、共感して自ら「応援したい!」と申し込んでもらう、“プル型”の仕組みづくりに注力しました。

たとえば、100万円単位のご支援をいただいたある企業との最初の接点は、「検索エンジン」。

Googleで「東日本大震災 寄付」などと検索すると、私たちのWEBサイトが上位に表示するようにSEOやリスティング広告など工夫したのが奏功しました。

また、マンスリーサポーターのほとんどがWEBサイトからのお申込みです。

今では月に100人以上の方が新規に申し込みいただいていますが、その多くはFacebookなどソーシャルメディアを通じてです。

成功確率を高めるための、3つのポイント—「戦略」「クリエイティブ」「広告・メディア」—

2014年9月に私は、カタリバのファンドレイジング責任者を退任。

今は、カタリバは非常勤でサポートしつつ、NPOや企業のマーケティングをお手伝いしています。

団体内で数字に追われているときは、無我夢中でなんとか走り抜けてきましたが、独立後にNPO/NGOの経営者や大学・研究機関などのファンドレイジング責任者の方50名以上からお話しを伺い、またいくつかの団体をお手伝いをするなかで、改めて分かったことがあります。

それは、単にキレイなWEBサイトをつくっても、スマホに対応させても、クレジットカード決済を入れても、それだけでは寄付は集まらないということ。

逆に、客観的な立場から俯瞰して眺めると、寄付マーケティングで成功の確率を高めるためのポイントとも言えるべきものが分かってきました。

  • ポイント1「戦略」:市場・競合・自団体の環境を分析して、適切な戦略を描けるか?
  • ポイント2「クリエイティブ」:寄付者の心に響く、コンバージョン率の高いランディングページ(LP)をつくれるか?
  • ポイント3「広告・メディア」:テストを繰り返して、CPAなど広告の費用対効果が合う“勝ちパターン”を見つけられるか?

この3つがかみ合えば、WEBからの寄付はヒトや場所にとらわれない分、爆発的な成長を見せることがあります。

実際に、WEBからのマンスリーサポーターの獲得数が月間10件に満たなかった団体が、4ヶ月間で月間100件近くの獲得へと大きく伸びたこともありました。

これからの連載、「戦略編」「クリエイティブ編」「広告・メディア編」の3つで、WEBカラノファンドレイジングの0→1の過程で具体的に行っている手順やノウハウをお伝えしたいと思います。

次回のテーマは、3つのポイントでも最も重要な分析・リサーチとそれにもとづく「戦略」。

また1ヶ月後に、お会いできるのを楽しみにしています。

この記事を書いた人
山内 悠太
ファンドレイジング・コンサルタント

1982年生れ。東京大学教養学部卒。大手メーカー(三洋電機)・広告代理店(ファインドスター)・教育NPO(認定NPO法人カタリバ)を経て、2014年に独立。
現在は「ファンドレイジング」と呼ばれる非営利団体の寄付募集を、コンサルタントとして支援しています。

マーケティング戦略の策定から「マンスリーサポーター」はじめ個人寄付収入の拡大、オペレーションのデジタル化まで、NPO・NGOや大学など10団体以上をサポートしてきました。

元々は「ダイレクトマーケティング」と呼ばれる分野で、広告やCRMの仕事を手がけてきました。
今もD2C(EC通販)やサブスクリプションなど業界にも携わり、その知見を非営利セクターに応用しています。

「非営利セクターで働く人、働きたい人のキャリアや学習を応援したい」という思いから、2022年にFunDio(ファンディオ)を立ち上げ。
「社会貢献の仕事をしたい」「NPOで働きたい」といった方には、キャリア相談にも乗らせてもらっています。

生まれ育った東京を8年前に離れ、湘南の自宅で仕事をしています。
7歳の娘の父。ラグビーやランニングなど体を動かすこと、本を読むことが好きです。

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