NPOやソーシャルベンチャーの採用面接、企業との共通点と違い

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NPOやソーシャルベンチャーの求人に応募する方なら、「面接で何を聞かれるか?」「どのように対策すればよいか?」など気になるかと思います。 企業の一般的な採用面接との共通点や、NPO・ソーシャルベンチャーならではのポイントについて解説します。

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目次

経験の棚卸しや志望動機の言語化など、基本動作は共通

採用面接でチェックされる基本的なポイントは、NPOやソーシャルベンチャーも基本的には企業と同じです。
「これまでどのような経験をしてきたか?」「どんな能力やスキルで、自社に貢献できるか?」「なぜ自社/自団体を志望するのか?」といった質問に答えられるようにしておきましょう。

転職活動や就職活動をしている方なら、以下のような準備をされることと思います。

  • これまでの経験の棚卸しや、能力やスキルの言語化
  • 会社/団体の事業内容や組織・社員などのリサーチ
  • 志望動機やご自身のビジョンとの紐付け

NPOやソーシャルベンチャーでも、これらの基本的な動作は同じです。

もちろん非営利団体や社会貢献性の高い仕事は、一般的な企業の仕事とは異なる“業界”にあたるので、「これまでの経験がどのように活かせるか?」「どんな能力やスキルを求められるのか?」など想像しづらいかもしれません。

ソーシャル業界は未経験の方でも、営業やマーケティング、経理や人事、マネジメントなど、さまざまなビジネスのスキルを活かせる場合も少なくありません。
仮説でもよいので、「このように貢献できるのでは?」と見立てを立てて話せると、「この部門や職種で活躍してもらえるかもしれない」と面接官にもイメージが湧きやすいですし、本気度を感じてもらいやすいはずです。

NPOやソーシャルベンチャーの採用面接で、企業とは異なるポイント

一方、企業の採用面接とは異なるポイントももちろんあります。
人材紹介で候補者と団体・企業のマッチングをするなかで、特に気になったポイントをまとめました。

ポイント1:ビジョン・ミッションへの共感

1つ目に大事なのが、社会課題や事業分野への思いを自分ごととして話せるか? です。
「社会貢献の仕事をしたい」といったように語る方は多いものの、イメージや想いばかりが先行している求職者の方も、残念ながらいらっしゃいます

そこで団体や企業が重視するのは、理念やミッションとご自身の価値観が、うわべではなく一致しているか?
「この社会課題を、なぜ解決したいと思ったか?」や「団体のビジョンやミッション、あるいは事業の特にどこに共感したか?」など話せるように準備しましょう。

ポイント2:ボランティアや社会活動の経験

2つ目が、ボランティアやインターン、あるいは寄付やイベントへの参加など、なにかしらその分野に関連する行動をしたことがある経験があると、アピールしやすいでしょう。
1でも述べたように、一過性の想いが先行した人を採用して、「入って仕事をしてみたら、イメージと違った」と早期に退職されてしまうと損失につながります。

特にNPOやソーシャルベンチャーの場合は、給与が引き留めの要因になりづらく離職までのハードルが低いのもあり、「自社・自団体や業界に合わない人」をスクリーニングするのが重要です。

そこで、ボランティアやインターンなどで「業界を経験したことがある」と、「転職して大きなギャップがある」が起こりづらいと感じてもらいやすいでしょう。
それらの経験がなかったとしても、イベント参加や寄付・買い物などで携わっておくと、実際に行動に移してきたことがある、という意味で「口先で語っているだけではない」とコミットを感じてもらいやすくなるはずです。

ポイント3:小規模組織で働いた経験

3つ目は、ベンチャー的な組織で働いたことがある経験です。
NPOやソーシャルベンチャーには、社員/職員1,000名以上など大組織は少なく、数十名から100名程度までの規模の割合が高く、またスタートアップのフェーズの組織もあります。

社会のニーズの変化によってスピーディに行動していきますし、ヒエラルキーや部署ごとの役割がきっちりしている組織は多くありません
「チームをまたいだ兼務が奨励されている」「正社員だけではなく、業務委託やインターン・ボランティアも合わせたチーム」、なかには「ティール組織的な構造をとっている」など、伝統的・階層的な組織とは異なります。

大企業だけを経験して転職した人にとっては、「慣れるまでは大変」という話もよく聞きます。
スタートアップやベンチャー企業に勤めていたり、本職以外でも「学生時代にインターンをした」「地域での活動に携わったことがある」など経験があると、組織にフィットする印象を抱いてもらいやすいでしょう。

ポイント4:協調的なコミュニケーション

4つ目は、コミュニケーションのスタンス。
相手に寄り添う、協調的なコミュニケーションができるか?はよく採用担当者とのすり合わせで話題に上がるポイントです。

ソーシャルセクターは、顧客だけではなく、行政や地域社会、寄付者やボランティアなどステークホルダーが多いのが特徴です。
したがって、「顧客だけを向いて動く」「競合に勝つことにフォーカスする」ではなく、多様な人々の意向を踏まえながら落としどころを調整する、バランス感覚が求められやすい傾向です。

過度な「思いの強さ」や「目標達成志向」は、時には“一方通行”にも捉えられてしまいます。
私は民間企業在籍時は広告代理店に勤めていたので、クライアントと仕入れ先を見ればよかったのですが、教育NPOに転職して一転、地域社会や行政なども考慮に入れたコミュニケーションを求められ、戸惑ったものでした。
「あちらを立たせ、こちらも立たせる」といった高度な調整力を発揮できる素養があるか?は、部門や職種にもよりますが企業より見られやすいです。

ポイント5:柔軟性とアンラーニング

5つ目は、柔軟に過去の経験を塗り替えていくことができる素地があるか?です。
先述したように、NPOやソーシャルベンチャーでも、企業での経験やスキルを活貸すことができます。
しかし、異なる業界かつソーシャルセクターの独特の要素もあり、そのまま持ち込んで転用しようとしても、なかなかうまくいかずに苦しむ人たちも見てきました。

私も広告代理店からNPOに転職した時は、想定外とアンラーニングの連続。半年間は、結果が出せませんでした。
「企業の方が、NPOやソーシャルベンチャーよりレベル高い」という意識を捨て、謙虚に適応できる人が成果を出しているように見えます。

このようにアンラーニングをしていけるか?逆に価値観や行動習慣が凝り固まっていないか?も、チェックされがちです。

プロセスは、書類選考+2-3回の面接が一般的

最後に選考のプロセスですが、これは一般企業と変わらない団体や企業が多いよう。

  • 履歴書・職務経歴書に加え、志望動機書を提出する
  • 書類選考通過後に、適性検査を受験する
  • 2次面接はオンラインや本部ではなく、活動現場で担当者と面接する

といったように団体や企業によって、独特のフローを入れている場合もありますが、基本的には「書類選考の後に2〜3回程度の面接」という流れが一般的です。
面接は1次面接はオンラインで実施される場合が、2023年時点では多いです。

「カジュアル面談を受け付けてくれるか?」「代表や役員は最終面接からか?早い段階から登場して口説きにくるか?」なども異なりますが、団体・企業のスタンスや候補者の魅力度などによってケースバイケースであり、業界に共通する傾向は見られません。

ちなみに、前章のポイント1で「ビジョン・ミッションへの共感」を挙げましたが、必ずしも志望動機が強くないと応募できない訳ではありません

弊社が人材紹介を営むなかで「志望度の高い人だけを紹介してほしい」という団体もありましたが、“売り手市場”のなか「優秀な人は自分たちでとりにいく」というNPOやソーシャルベンチャーも増えました。
もちろんその人の価値観や志向が根っこで団体の理念やミッションに合いそうか?はポイントで、共通して重視されていました。

未経験の方にとっては外から見えづらい業界ではありますが、ご自身の価値観や志向と一致する団体や企業で、これまでの経験やスキルを活かせそうな求人が出たら、積極的に応募されてみてはいかがでしょうか?

この記事を書いた人
山内 悠太
ファンドレイジング・コンサルタント

1982年生れ。東京大学教養学部卒。大手メーカー(三洋電機)・広告代理店(ファインドスター)・教育NPO(認定NPO法人カタリバ)を経て、2014年に独立。
現在は「ファンドレイジング」と呼ばれる非営利団体の寄付募集を、コンサルタントとして支援しています。

マーケティング戦略の策定から「マンスリーサポーター」はじめ個人寄付収入の拡大、オペレーションのデジタル化まで、NPO・NGOや大学など10団体以上をサポートしてきました。

元々は「ダイレクトマーケティング」と呼ばれる分野で、広告やCRMの仕事を手がけてきました。
今もD2C(EC通販)やサブスクリプションなど業界にも携わり、その知見を非営利セクターに応用しています。

「非営利セクターで働く人、働きたい人のキャリアや学習を応援したい」という思いから、2022年にFunDio(ファンディオ)を立ち上げ。
「社会貢献の仕事をしたい」「NPOで働きたい」といった方には、キャリア相談にも乗らせてもらっています。

生まれ育った東京を8年前に離れ、湘南の自宅で仕事をしています。
7歳の娘の父。ラグビーやランニングなど体を動かすこと、本を読むことが好きです。

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