ファンドレイジングとは
ファンドレイジングとは、非営利団体が活動に必要な資金を募り、支援を受けることです。
日本ファンドレイジング協会は、民間非営利団体が「活動のための資金を個人、法人、政府などから集める行為」を総称して、ファンドレイジングと定義しています。
(日本ファンドレイジング協会WEBサイトより)
NPO/NGOや財団のほか、大学・研究機関、美術館・博物館やスポーツチーム、福祉施設など。
広い意味での非営利団体が資金を集めるには、さまざまな手段があります。
- 寄付:個人や企業から、対価のないお金を受け取る
- 会費:会員に毎月や毎年など、定額を負担してもらう
- 助成金・補助金:財団や国・自治体などから、資金提供を受ける
- 事業収入:商品の販売やサービスの提供で、売上を立てる
- 委託収入:都道府県や市町村など行政機関から、事業を受託する
- 融資:銀行など金融機関から、借入をする
これらのなかで、寄付や会費、助成金など「支援を受ける」タイプの資金源から、対価を受け取らない方法によって、資金を募ることをファンドレイジングと指します。
人によって言葉の指す範囲は異なり、狭義では「寄付集め」と同じ意味で使われる場合もあります。
また広義では、融資を受けて後で返済したり、商品・サービスを販売して事業収入としたりなど、「対価性」のある資金調達を含める場合もあります。
資金の種類と、ファンドレイジングの定義
なお英語ではFundraisingと書きますが、分解すると、Fund(資金)+Raising(持ち上げる)。
直訳すると、「資金調達」です。
そのような語源もあってか、営利企業が株式や社債の発行などで資金を調達すること、投資家や金融機関に資金提供を呼びかけることも、「ファンドレイジング」と言われる場合があります。
このようにさまざまな定義がありますが、はじめての方は「非営利団体が寄付・会費・助成金などで、活動資金を集めること」と覚えておくとよいでしょう。
クラウドファンディングとの違い
ファンドレイジングと混同されがちなのが、「クラウドファンディング」です。
クラウド(Crowd=群衆)とファンディング(Funding)を組み合わせた造語。
個人や団体、企業がインターネットを介して、不特定多数の人たちから資金を募ることを指します。
クラウドファンディングは資金集めの手法のひとつで、ファンドレイジングと重なるところもあります。
クラウドファンディングは、主に以下の2種類に分かれます。
- 購入型:商品の先行予約やサービスなど購入者に「リターン」を提供する
- 支援型:リターンは付属的にすぎず、純粋に「応援」や「サポート」の意味合いが強い
前者の「購入型」は、非営利団体に限らず企業や個人などが広く募集しています。
後者の「支援型」が、特に非営利団体のファンドレイジングの1つの手段として使われる場合が多くあります。
新しいアイデアや事業の資金集めにも適しているため、設立から間もないNPOがスタートアップ期に活用することも多くあります。
ファンドレイジングの目的とメリット
ファンドレイジングの目的は、シンプルに言えばお金を集めることです。
ただし単なる資金集めに終わらず、支援を呼びかけるプロセスを通して、NPOが取り組む社会的な課題やサービスを人々に広く伝え、理解してもらうことも大切な目的とされています。
寄付をきっかけに、団体の活動や背景にある社会課題に理解を深め、自分自身もボランティアや本業を通じた社会貢献を始める方もいます。
また寄付の呼びかけにともなう広報によって、団体を知らなかった方との接点が生まれ、後々に資金提供につながるケースもあります。
「社会課題の解決のための仲間を募る」というあり方に注目して、ファンドレイジングを「フレンド・レイジング」と呼ぶ専門家もいるくらいです。
ファンドレイジングの事例
では非営利団体は実際に、どのようなファンドレイジングに取り組んでいるのでしょうか?
途上国などで国際協力をする「国際NGO」の2つの団体の事例から、みていきましょう。
事例1|規模の大きな団体:国境なき医師団(MSF)
国境なき医師団は、紛争や自然災害、貧困などによって危機に直面する人々に緊急医療援助を届けています。
1999年にはノーベル平和賞を受賞した、世界的にも知名度の高い団体です。
2021年度の寄付金額は、111億円にのぼります。
1992年に日本事務局を設立して日本での資金調達をスタートしましたが、30年間で順調に成長してきているようです。
- テレビCMの放映
- 新聞・雑誌への広告掲載
- ダイレクトメールや会報誌の郵送
- デジタルマーケティング
- 電話での寄付呼びかけ
- 街頭キャンペーン
- 遺贈や相続財産による寄付募集
などあらゆる手法を駆使して、主に個人をターゲットに寄付を募っています。
ファンドレイジングにも財源を充て、広告やキャンペーンなど費用のかかる手段も含めて、継続的な成長のために投資していくことを重視しているようです。
事例2|規模の小さな団体:NPO法人エイズ孤児支援NGO・PLAS
PLASは、エイズで親を亡くし差別や貧困に苦しむ子どもたちを支援するため、2005年に日本で設立されたNPO法人です。
アフリカのケニアとウガンダで、孤児を抱えるシングルマザー家庭を中心に、職業訓練や生活向上などを支援。
「取り残された子どもたちが前向きに生きられる社会」を目指しています。
年間予算である約3,500万円を集めるため、主にインターネットを活用。
以下のような方法で、寄付を募っています。
- クラウドファンディング
- チャリティオークション(NFTも活用、著名人等の協力も)
- マンスリーサポーター(毎月の継続的な寄付者)の募集
- TwitterやFacebookなどSNSによる寄付告知
- オンラインイベントによる参加費収益
他の団体についても国際協力だけではなくもっと知りたい方のために、国内外の成功事例をまとめていますので、あわせてご覧ください。
(参考)ファンドレイジングの事例は?成功したNPO・NGOから勉強できること
具体的に何をやるの?ファンドレイジングの始め方
これまでファンドレイジングに取り組んだことがなかった方にとっては、「ファンドレイジングを始めたい!」と思い立ったとき、何から始めるべきか迷うことがあるかもしれません。
最後に、ファンドレイジングの計画や戦略づくりの進め方を、5つのステップに分けて解説します。
ステップ1:目標を決める
ファンドレイジングの目標は、それぞれのNPOが目指す規模感によってさまざまです。
たとえば年間で数百万円が目標金額であれば、いくつか助成金を申請したり、クラウドファンディングを立ち上げて知人友人に告知したりすることで、達成できるかもしれません。
一方で、「年間10億円以上」といった事業規模では、民間企業顔負けのマーケティングや営業を展開して、これまでつながりのなかった不特定多数の人々に活動を知ってもらい、支援が集まる仕組みをつくっている団体もあります。
活動にどのくらいの資金が必要なのか?追加で集める必要があるのか?事業計画と照らし合わせて明らかにしましょう。
ステップ2:リサーチする
目標が定まったら、ファンドレイジングの事例やノウハウを集めます。
活動分野が似ている団体や、目標とする規模の近いNPOをいくつかピックアップして、どのような手法でファンドレイジングをしているのか?を調べましょう。
オンラインで公開情報を調べる
団体のWEBサイトで、財務諸表や年次報告書、寄付ページなどをチェックしましょう。
セミナーや講演で、ファンドレイジングについて発信していることもあります。
日本ファンドレイジング協会が主催する「ファンドレイジング日本(FRJ)」や、NPOサポートセンターのイベントなどをチェックしてみましょう。
非営利団体にヒアリング
他団体でファンドレイジングを担当する職員に、人づてに直接ヒアリングするのもおすすめです。
NPOは組織を越えたつながりをつくりやすく、ノウハウなどの情報提供にオープンな団体も少なくありません。
あくまで関係性しだいですが、成功事例や失敗談など生きた情報を教えてもらえることもあります。
支援企業に問い合わせ
寄付システムやクラウドファンディング、広告代理店など、ファンドレイジングの支援をしている企業もあります。
それらの企業に問い合わせをしてサービスの説明を受けるなかで、同業種の団体の事例などを聞かせてもらえることもあるかもしれません。
ステップ3:手法を選ぶ
ゴールを決めて情報を収集した後は、自分たちに合う方法を選びます。
以下のように、さまざまなファンドレイジングの施策がありますが、団体が取り組む社会課題や活動内容によってフィットする手法は異なります。
- 街頭で募金活動をする
- 企業とタイアップして「寄付付き商品」を売り出す
- 毎月の寄付者(マンスリーサポーター)を募る
- 助成金を申請する
- イベントを主催して参加費を活動に充てる
(参考)ファンドレイジングの方法は?定番から”知る人ぞ知る”手法まで7選
街頭募金では「赤い羽根共同募金」や「あしなが募金」が有名ですし、マンスリーサポーターでは「ユニセフ」や「国連UNHCR協会」などのやり方も参考になるでしょう。
「寄付付き商品」では、たとえば「TABLE FOR TWO」という団体が、商品の売上の一部が寄付になる仕組みをつくっています。
ステップ2のリサーチと往復しながらになりますが、先行団体の事例を調べながら、自分たちの団体に合いそうな手法、あるいはチャレンジしてみたい方法を選びましょう。
ステップ4:リソースを用意する
ステップ3で選んだ手法を実現するために、必要な人・お金・ナレッジなどのリソースを用意します。
人
ファンドレイジングに取り組むには、実行を担う担当者が不可欠です。
団体内に担当者を配置できるよう異動や採用を検討したり、外部の支援企業やプロボノにサポートしてもらったりと、適切な人員を用意できるようやりくりしましょう。
お金
ファンドレイジングには先ほどの人件費や業務委託費のほか、WEBサイトやツールの制作費、クレジットカード決済の手数料やシステム導入費まで、さまざまな費用がかかります。
「お金を集めるための費用が必要」となると厳しく感じる方もいるかもしれませんが、このような組織強化に充てられる助成金も用意されています。(例:Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs)
自己資金でまかなうのが難しい場合は、申請するのも良いでしょう。
ナレッジ
ファンドレイジングについて、ご自身で勉強することも重要です。
身につけた知識やノウハウを団体内で共有し合うことで、ナレッジが団体に定着します。
団体が目指すファンドレイジングの目標や財務規模によっては、外部のコンサルタントやNPOを支援する企業に依頼することで、より早く成果を出せることもあります。
ステップ5:トライ&エラーを繰り返す
ファンドレイジングの成果は、トライ&エラーの積み重ねで生まれます。
最初から結果が出ることは稀なので、失敗してもめげずにチャレンジを繰り返し、PDCAをまわしていくことが大事です。
同じ規模のNPOのスタッフ同士で交流を深め、相談できる仲間やメンターを持っておくのも良いでしょう。
定期的に情報交換ができ、失敗や成功の事例を学びあいながらチャレンジを継続しやすくなります。
いかがでしたでしょうか?NPOが活動に必要な資金を調達する「ファンドレイジング」には、さまざまな手法があります。
既にファンドレイジングに取り組まれている方は、まずは自団体の目標を決め、情報集めや適切な手法を選ぶことからスタートしてみましょう。
トライ&エラーを重ねていくことで、自団体ならではの成功事例が生まれるかもしれません。