2020年、なぜデジタルからマンスリー寄付者が大幅に成長したのか?

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毎月1,000円~など、定額の寄付で非営利団体を応援するマンスリーサポーター。 NPOにとっては「ストック収入の安定性」と「使途の自由度」が魅力的と前号でお伝えしましたが、難しいのが新規会員の獲得です。 2020年、デジタルを活用してマンスリーサポーターを増やした団体は、何をしていたのか?「デジタルシフト」や「DX」などコロナ禍での動向も含めて、マーケティングの方法論をお伝えします。

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目次

コロナ禍で、「WEB経由の新規会員が2倍に増加」も

1回目の緊急事態宣言が発令されるなど、コロナ禍の真っ最中にあった2020年4、5月頃。

WEBサイト経由でマンスリーサポーターに入会される方は、実は大幅に増えていました。私が知る限りでは、月平均でコロナ禍の前の1.2~1.5倍、なかには2倍以上と大幅に伸ばした団体さんもありました。

経済は停滞していたこの時期、なぜ一般の業種とは逆とも言える現象が起こっていたのか?「寄付意識の高まり」「デジタル・シフト」「広告配信単価の低下」の3つの条件が重なったからと私は捉えています。

1つ目「寄付意識の高まり」は、ファンドレイジング関係者なら実感されている方も多いでしょう。

災害や事件など大きな社会的イベントが起こった直後には、「私にもできることで貢献したい」と支援マインドが高まります。
今回も、コロナ禍で倒産の危機に陥る店舗や、懸命に頑張る医療従事者などが報道されることで、応援消費やクラウドファンディングの流れが盛り上がりました。

2つ目の「デジタル・シフト」ですが、新規会員獲得のチャネルは対面から非対面、紙・デジタルまでさまざまな手法がありました。

獲得チャネルごとのメリット・デメリット

これらのうち、街頭やショッピングセンターなどブースを構え支援を呼びかける「Face to Face」や、活動説明会やパーティーなどの「イベント開催」はじめ、対面でのファンドレイジング活動は多くが自粛を余儀なくされました。

SNSの配信やオンラインイベントなど、デジタルでの呼びかけが盛んにされていたのは記憶が残っているでしょう。
支援マインドの高まったドナーが、デジタル空間で寄付先を選ぶ機会が増えました。

3つ目の「広告配信単価の低下」によって、WEB広告を活用する団体にとって、費用対効果が大幅に改善しました。

背景にあったのは、「景気の悪化を見越した企業が広告予算をカット」など広告出稿側の需要が下がったこと。
WEB広告を「何円でどれだけの人数に配信できるか?」は、需要と供給によって日々変動しています。

広告の配信単価が、コロナ禍前の3分の2から最大で2分の1にも下がったため、同じ費用をかけても新規獲得件数が大幅に増えました。

これらの結果、コロナ禍という逆境下においてもデジタルを活用して新規会員獲得が好調な団体が少なくなかったのです。

「10,000人突破!」など、デジタルマーケで成長する団体が
2010年代後半から増えていた

これらのデジタルシフトは、コロナ禍によって一気に訪れた訳ではありません。
2010年代後半から、デジタルの活用によってマンスリーサポーターの人数を増やすNPOが増えてきました。

私がご支援に携わる団体でも、たとえば認定NPO法人かものはしプロジェクトは、活動説明会など対面中心からデジタルメインに切り替えていき、2019年度初めには会員数10,000人を達成。(2021年3月末時点で14,756人)。

マンスリーサポーター数の年次推移の例

認定NPO法人カタリバも、マンスリーサポーター数20,000人を突破しました(2021年3月末時点で22,971人)。その他にも、

・500名前後で停滞していた会員数が、WEB広告の活用で1,000名を突破
・代表の講演や人脈からが主なチャネルだったが、オンライン活用の仕組み化で3,000名台に
・立ち上げからデジタルマーケに集中して、5,000名以上の新規ドナーを獲得

など、いくつかの団体でデジタルマーケティングを活用したマンスリーサポーター収入の拡大事例が生まれています。

団体の規模・フェーズ別の考え方

「これからマンスリーサポーター収入を拡大したい」という団体さんで、たとえば事業規模1億円以上など一定の先行投資の余力がある場合は、WEB広告も活用するなどデジタルマーケティングを充実させるのが、2020年時点では近道です。

新規会員獲得の成功パターンづくり、3つの壁

こうした取り組みの中でわかってきたのは、新規会員獲得の成功パターンを作るためには、いくつか「乗り越えなければならない壁」もあること。
もちろん団体によって課題は異なりますが、共通してぶつかるのは次の3つのポイントです。

1つ目は、“鉄板”の共感ストーリーをつくること。
「受益者が支援を受けて、どのように変化したか?」や「スタッフがどのような想いで活動に参加しているか?」などリアルなエピソードがあるか否かが、広告の反応を左右します。

続いてのポイントは、興味を持って団体のWEBサイトに訪れたユーザーが寄付してくださる確率をいかに高められるか?
そのためには、継続してWEBサイトを改善していく地道な努力が求められます。

最後に重要なのは、成功方程式ができたら投資をすること。
「いくらの費用を投下したら、どの程度のリターンを得られるのか?」経営の視点で、意思決定していきます。

また、単に「WEBサイト経由の新規会員が増える」という”デジタル・シフト”ではなく、ファンドレイジング全体をデジタルを基盤へと変革していく、いわゆる「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」を実現するためには、人材の採用・育成や組織文化なども大きく関わってきます

次回以降では、さまざまな団体さんのご支援において体験させてもらった成功・失敗事例なども踏まえて、これらのポイントを1つずつお伝えしてまいります。

この記事を書いた人
山内 悠太
ファンドレイジング・コンサルタント

1982年生れ。東京大学教養学部卒。大手メーカー(三洋電機)・広告代理店(ファインドスター)・教育NPO(認定NPO法人カタリバ)を経て、2014年に独立。
現在は「ファンドレイジング」と呼ばれる非営利団体の寄付募集を、コンサルタントとして支援しています。

マーケティング戦略の策定から「マンスリーサポーター」はじめ個人寄付収入の拡大、オペレーションのデジタル化まで、NPO・NGOや大学など10団体以上をサポートしてきました。

元々は「ダイレクトマーケティング」と呼ばれる分野で、広告やCRMの仕事を手がけてきました。
今もD2C(EC通販)やサブスクリプションなど業界にも携わり、その知見を非営利セクターに応用しています。

「非営利セクターで働く人、働きたい人のキャリアや学習を応援したい」という思いから、2022年にFunDio(ファンディオ)を立ち上げ。
「社会貢献の仕事をしたい」「NPOで働きたい」といった方には、キャリア相談にも乗らせてもらっています。

生まれ育った東京を8年前に離れ、湘南の自宅で仕事をしています。
7歳の娘の父。ラグビーやランニングなど体を動かすこと、本を読むことが好きです。

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