クレジットカード決済エラーによる離脱を防ぐ!「支援し続けたい」に寄り添う、オペレーションの仕組み

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オンライン寄付で多くの人々に使われる、クレジットカード。特にマンスリーサポーターなど継続寄付では、カード決済のエラーによる支援の停止を防ぐことが、継続率を高めるために重要です。寄付者さんの「支援したい」というお気持ちに寄り添い、寄付を続けてもらうためには、オペレーションをどのように整えればよいのでしょうか?クレジットカード業界の仕組みや動向と合わせて、寄付者さんに決済情報を更新してもらうための仕組みの作り方をお伝えします。

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目次

マンスリーサポーターの「継続率90%」を支える、自動更新決済

毎月継続的に支援してくださっていた方からの寄付が、クレジットカードの決済エラーによってストップしてしまう。
マンスリーサポーターに力を入れている団体なら、体験したことがあるでしょう。

「カードを紛失して停止した」
「結婚にともない、名義を変更した」
「大きな買い物をしたので、限度額をオーバーしてしまった」

といった理由が、寄付者さんに連絡をとれるとわかります。

支援を続ける意向を確認できた方については、カード情報を登録し直してもらえれば支援を再開できますが、メールや電話などつながらない方は、そのまま寄付が停止してしまいます。
悪いタイミングが重なってしまったのか、この機会に「寄付をやめます」と解約・退会をお申し出いただく方もいます。

マンスリーサポーターを導入する団体にとっての大きなメリットは、継続率の高さです。
「1年後に80-95%はご支援を継続」が標準的なので、サポーターが増えるほど収入が積み上がっていきますが、それを支えているのが決済の自動更新。
クレジットカードや口座振替などで、寄付者さんから停止のご連絡をもらわない限りは、引き落としが毎月かかる仕組みです。

寄付者さんにとっては支払いにかかる手間なく寄付を続けられるので、「やめたい」と積極的な決断をしない限り、支援を続けてくださいます。
その反面、決済のエラーによって引き落としがかからなくなってしまうと、ご支援をやめてしまう方もいらっしゃるのです。

「オーソリ」をめぐるカード業界の慣行が変化

寄付者さんのカード情報が変更されたからといって、全ての場合で決済がストップする訳ではありません。

たとえば「洗い替え」という仕組みを導入していれば、「有効期限切れ」のカードについても寄付者さんがカード情報を個別に登録しなくても、決済がかかり続ける場合もあります。
(決済代行会社やカード会社によって、カバーできる範囲が異なります。)

しかし、クレジットカードの継続決済にまつわるルールは、非営利団体などカード決済を導入する事業者、「加盟店」側にとってこの数年間で厳しくなってきました。
クレジットカードの使用にあたっては「オーソリ」といって、カードが適正か否か?を確認して、決済の利用枠を確保する仕組みがあります。
「カード番号や名義を誤って入力した」「限度額をオーバーしている」「不正利用がされている」といった場合は、決済を通さないようになっているのです。

※カード業界に馴染みのないファンドレイジング関係者の方にもわかりやすいように、オーソリについて専門的な内容を省略して簡単に説明しています。
WEB上にも詳しく解説した記事が見つかるので、実務で活用するなど知りたい方は検索などで調べてみてください。

クレジットカードにかかわるプレイヤー(SBペイメントサービス株式会社の記事より引用のうえ加工)

継続決済の場合、マンスリーサポーターを古くから導入する日本のNGO/NPOでは、初回の申し込み時でオーソリをかけて適切なカードと判定できれば、2回目以降はオーソリをとらなくても課金をできている団体が少なくありませんでした。
この仕組みをとっていると、「名義を変更した」といった場合でも、寄付者さんがカード情報を登録し直さなくても、決済がかかり続ける場合もあります。
しかし、この直近数年間はこのような運用方法を取りにくくなっています。

VISAやMASTERをはじめ「国際ブランド」の意向もあり、2回目以降の寄付でも月次の決済のタイミングで1回1回オーソリをかける、「全件オーソリ」とも呼ばれる運用への移行が国際的な潮流に。
決済代行会社やカード会社と新しく契約を締結する場合はもちろん、2回目以降はオーソリをとらない運用を続けてきた団体にも、切り替えを迫られるケースが増えています。
ひとたび「全件オーソリ」に切り替えると、決済エラーの寄付者が数百人、なかには団体規模にもよりますが、数千人単位で発生してしまう
ことがあるのです。

寄付者の離脱を防ぐため、カード更新の仕組みをつくる

では、決済エラーによって支援が途切れず、寄付を続けてもらうためには団体としてどうすればよいでしょうか?
当たり前ですが、大事なのはカード情報が変更されたら寄付者に更新の手続きをしてもらうこと。
それらを負荷なく実現していく、オペレーションの仕組みづくり
です。

方法1:決済エラー者への対応

まずは当たり前の取り組みですが、決済エラーが発生した寄付者さんに「決済ができなかった」旨とカード情報の更新方法を、メールでご案内しましょう。
寄付者の入会時期やエラー理由などにもよりますが、初めてのエラーについては15〜50%程度は更新をしてくれて、翌月の決済を再開できます。

しかし、メールアドレスは登録されているものの、「私用のメールはチェックしていない」「他のメールに紛れてスルーしてしまった」という方もいらっしゃいます。
(メールマガジンの開封率も、30%に及ばないこともあるでしょう)

そこで、郵送や電話などオフラインでもアプローチしていきます。
電話番号が分かっている寄付者さんには、SMS(ショートメッセージ)も有効かもしれません。

方法2:予防的な取り組み

決済エラーが既に発生してしまった寄付者さんへの対応の仕組みをつくれたら、エラーができるだけ起こらないようなアプローチにも着手しましょう。

ご自身がユーザーの立場でも、「有効期限の更新で新しいカードに」「メイン使いのカードに変更したい」といったときに、月額払いの登録を切り替えようとしたものの、手間がかかって面倒だった、という経験はないでしょうか?
「クレジットカードを更新する」をしやすくすることを意識しましょう。
具体的な方法は別の記事でも書きましたが、寄付者さんが探した時に団体に問い合わせをせずに、その場で手続きできるようにすることが大事です。

(参考)「「支援者サポート」の自動化で、バックオフィスの安定と良い“寄付体験”を両立する

更新用のWEBフォームを用意して、団体サイトやメール、郵送物のQRコードなどで分かりやすくご案内しましょう。

専用フォームで、カード変更をWEBサイトで24時間受付

月次でエラー解消率をモニタリング

このように施策を進めていくのと合わせて、実績を数値でモニタリングしていきましょう。
具体的には、決済エラーによる退会者が何人発生してしまうか?何人が決済方法を更新してご支援を再開してくださるか?を月ごとに管理していきます。

たとえば以下の図のように、2022年4月に100人の寄付者でエラーが新たに発生してしまったとします。
そのうち40人が初月でカード更新をするなどして、2ヶ月目の決済はOKに。
この場合は、40%のエラー解消率です。

エラー解消率を月次でモニタリング

同様に、2ヶ月目に10人、3ヶ月目に5人・・と新たに決済を更新してくれて、5ヶ月間の合計で65人がご支援を再開してくれました。
この65%が決済エラーの解消率、すなわちご支援を再開してもらえる割合です。
「エラー解消率を70%以上に」といった目標を定めて、前章のステップ1で述べたようなメールや郵送といった施策のPDCAを回していきます。

また累積寄付者数に対して、決済エラーの発生割合をできるだけ抑えることも大切です。
ステップ2の「予防」の施策を整備するとともに、決済代行会社などと確認しながら決済エラーが発生しにくい環境を整えていきます。

既存ドナーとの関係性を大事に、LTVを高める

マンスリーサポーターが累計で寄付いただく金額、いわゆる「LTV」は5年間で100,000円前後(80,000〜120,000円程度)になることが多いものです。

継続率(5年間)の実績値から、LTVを概算

(参考)FunDio「マンスリーサポーターの“投資対効果”を考えるうえで不可欠な、「LTV」という指標とは?

決済エラーのせいで寄付が停止してしまうと、その寄付者の支援金額や期間などにもよりますが、その一部が失われてしまいます。
たとえば、支援開始から2〜3年後に決済エラーとなった寄付者さんについては、その半分の50,000円前後が失われてしまう、というアバウトな計算もできます。

この数字を逆から見ると、決済情報を更新してもらうたびに、一人あたり50,000円前後の追加支援をいただける、という捉え方もできます。
そう考えると、工数や費用をかけてでも取り組む価値があると分かるでしょう。

電話や郵送といったオフラインの施策には、職員の工数もかかりがちです。
アウトソースする場合も、印刷費・発送費やコールセンターへの外注費など、直接的な費用もかかります。
費用対効果を計算しながら、取り組む価値があるかをぜひ考えてみてください。

新規に支援者を募るのも大事ですが、既存の寄付者さんに支援し続けてもらえることが、安定的な収入を確保するうえでは重要です。
「支援し続けたい」と思ってくださる寄付者が、時間的な負担や迷いなく決済情報を更新してもらいやすいオペレーションの仕組みを作ること。
その前提として、“自動更新”の仕組みに頼らず、「支援し続けたい」と思ってもらえるようなコミュニケーションを継続的にとっていくことが、ますます重要になってきています。

この記事を書いた人
山内 悠太
ファンドレイジング・コンサルタント

1982年生れ。東京大学教養学部卒。大手メーカー(三洋電機)・広告代理店(ファインドスター)・教育NPO(認定NPO法人カタリバ)を経て、2014年に独立。
現在は「ファンドレイジング」と呼ばれる非営利団体の寄付募集を、コンサルタントとして支援しています。

マーケティング戦略の策定から「マンスリーサポーター」はじめ個人寄付収入の拡大、オペレーションのデジタル化まで、NPO・NGOや大学など10団体以上をサポートしてきました。

元々は「ダイレクトマーケティング」と呼ばれる分野で、広告やCRMの仕事を手がけてきました。
今もD2C(EC通販)やサブスクリプションなど業界にも携わり、その知見を非営利セクターに応用しています。

「非営利セクターで働く人、働きたい人のキャリアや学習を応援したい」という思いから、2022年にFunDio(ファンディオ)を立ち上げ。
「社会貢献の仕事をしたい」「NPOで働きたい」といった方には、キャリア相談にも乗らせてもらっています。

生まれ育った東京を8年前に離れ、湘南の自宅で仕事をしています。
7歳の娘の父。ラグビーやランニングなど体を動かすこと、本を読むことが好きです。

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