プロボノの意味と活動内容について
プロボノとは、ラテン語の「Pro Bono Publico(公共的に善いこと)」という言葉を語源としますが、現在使われている意味としては「自らの職業によって培った専門スキルや知識を使った社会貢献・ボランティア活動を行うこと」です。
プロボノはもともと米国では一般的な言葉で、弁護士による社会貢献活動として理解されていたところ、ITやマーケティングなど、より幅広い概念に広がりました。
また、2008年のリーマンショックによる社会不安の中で企業寄付の代替として、失業した労働力の行き場としてプロボノは拡大しました。
日本においても、もともとは弁護士会や外資系企業による動きだったプロボノが、ビジネスパーソンたちの社会課題やソーシャル分野への関心が高まるにつれて普及していきました。
現在では、いくつかのプロボノ推進団体があり、NPOの就職サイトでも探せるなど、より参加しやすくなっています。
プロボノのマッチングサービス一覧
プロボノとボランティアの違い
プロボノは、ボランティアの一種であり、社会課題を解決するための活動という点は同じです。
ボランティアでは、知識やスキルをそれほど必要としない作業の一部分を切り出してお願いするイメージでしたが、プロボノは、例えばIT、デザイン、マーケティングなど専門性が必要な部分を依頼できるため、NPOとしてもメリットが大きいと言えます。
また、最近は「プロボノ」の実際的な意味合いもより拡大しており、「社会人ボランティア」といったイメージ程度で使われもするため、それほど高度な知識やスキルがなくとも、一般のビジネススキルを活かした事務作業やバックオフィス業務に関わる人も含まれていると考えていいと思います。
どんな仕事があるの?
NPO活動というと企業とは全く違う組織や業務のように思われるかもしれません。
しかし、活動目的や主となる活動が企業と異なるだけで、企業と同じように、事業計画を作ったり、営業をしたり、web制作があり、調査をしたり、チラシやSNSなどの広報活動があったりと、近しい業務が多くあります。
また、寄付者を募るファンドレイジングなどNPO特有と思われる業務にも一般業務スキルは活かせます。
そのため、広報、営業、IT、マーケティング,、法務、経理など様々な仕事を募集しているNPOが多くあります。
活躍できる専門スキル例
もともとは弁護士による社会貢献活動から広がったプロボノですが、他にも様々な専門職・スキルを持っている人が活躍しています。
例えば、このようなスキルが活かされています。
- ITスキル(ウェブサイト構築や運用、利用しているシステムのサポートなど)
- デザイン(ウェブデザイン、チラシ、報告書など)
- マーケティング、営業(寄付獲得、法人営業、資料作成など)
- プロジェクトマネジメント
このように、かなり幅広いスキルが使えます。また、議事録作成など、事務作業全般のボランティアに入る社会人の方もいます。
NPOにおけるプロボノのニーズ
NPO側からすると、専門スキルを持った人材の雇用やアウトソーシングはコストがかかるため、その部分をボランティアに依頼できるのは大きなメリットです。
特に、それほど規模が大きくなっていないNPOが、体制を整えるまでの段階でプロボノが参加してくれると非常に助かります。
NPOによってどのようなニーズがあるかは様々であり、具体的に専門性の必要なプロボノを募集していることもあれば、ボランティア希望者にどのようなことが出来るかを確認して依頼業務をすり合わせることもあります。
例えば、私の過去の例ですが、あるNPOでボランティアをしたいと思い問い合わせたところ、先方から契約書作成のサポートをしてもらいたいと依頼があり、業務を調整したこともあります。
スキルに自信がなくてもプロボノに参加できる?
社会人経験が3年未満など「まだ若手だから」と自分のスキルや専門性に自信がないという方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、議事録や報告書の作成や、パワーポイント資料の作成、情報収集や整理など、一般的な業務スキルを活かしてNPOのサポートをすることも可能です。
NPO活動を推進するには、対象者の支援活動などの中核業務に出来るだけリソースを割きたいと考えています。
そのため、付随する様々な業務を社会人経験がある人がサポートしてくれるなら、非常に助かる場合があります。
短い時間での参加、副業も歓迎される?
プロボノの活動は、基本的にはご自分の本業の仕事がある人がほとんどです。
そのため、限られた時間で出来る業務を切り分けて対応することは一般的なので、安心してください。
どの程度のコミットメントが求められるかは、NPOや業務によるので、お互いの調整によるところです。
注意すべきは、「無償のボランティアだから」「本業があるから」と中途半端な気持ちで関わってしまうことです。
NPOにとって、プロボノの方への説明や受け入れ態勢などはそれなりにリソースがかかるため、一定の責任感が必要です。
もちろん、途中で本業や生活面の状況が変化し、対応が難しくなることは誰にでもありえます。
その場合は、早めに担当者と相談するなどしましょう。
プロボノ活動の報酬
基本的には、報酬のない活動が基本になります。
専門性のある業務に対して報酬を払うのであれば、それは通常のビジネスやアウトソーシングと変わりなくなってしまいます。
ただし、有償ボランティアという言葉があるように、交通費などの実費や謝礼を頂けることはあります。
一方、例えばウェブサイト構築において一般のビジネスよりも格安の報酬にてサービス提供するなどもあり、これもプロボノのひとつの形とも言えるかもしれません。
プロボノ参加のメリットとデメリット
実は、企業の社会貢献プログラムとして、社員によるプロボノ活動を推進していることもあります。
この背景にはもちろん社会貢献の意味合いもありますが、何より人材育成や本業へのメリットもあるからと言えます。
一方で必ずしも、双方にとって良い結果となるプロジェクトばかりではないため、良い思いをせずに終わってしまう可能性もあります。
【メリット】
- 外部での経験を得ることにより、本業のみを行うよりも、知見や視野、スキルを伸ばせる
- 業務スキルを社会貢献に使うことで、本業へのモチベーションも上がる
- NPOに就職したいなどのキャリア目標がある場合は、プロボノ活動を通してNPOや社会課題への理解が深まり、人との繋がりも出来るため、キャリアステップにつながる
【デメリット】
- プロボノ活動に集中しすぎることで、本業への支障がでる可能性がある
- 対応したNPO団体との相性が合わなかったり、上手く対応できないことで、自信を失ったりNPO業界への不信につながる
- 必ずしも成果につながらない場合、徒労感や焦りなどネガティブな気持ちを持ってしまう
このようなデメリットを削減するためには、まずは本業も大切にすることです。
そして、無償のボランティアだからと言って「やってあげる」気持ちを持たずに、真摯に業務としてNPOが求めていることやニーズに応えていく気持ちが大切です。
また、評論家や批評家になるのではなく、対象としている社会課題や支援活動への理解を深めていく学びの姿勢が重要と考えます。
プロボノ活動の始め方
プロボノ活動には、大きく2種類の関わりかたがあります。
ひとつは、個人として個別のNPOに関わる方法です。
自分が特に共感しているNPOや社会課題がある場合、個別に連絡をして、NPOのニーズと自分が提供できるスキルの調整を行います。
この方法の場合、NPO側にニーズが無かったりなど対応が難しい場合があるので、受け入れ可能なNPOが見つかるまで探す必要があります。
activoやShare worksで募集しているものに申し込む方法もあります。
参加する前には、自分自身でできるだけその社会課題やNPOについて調べておくなどして、NPO側の手間を増やさないようにする、心遣いもあったほうが喜ばれます。
もう一つが、中間支援団体や勤め先企業のプロボノプロジェクトに参加する方法です。
主に、プロボノチームを作り、期間を区切ったプロジェクトに参加することがほとんどです。
中間支援団体がNPO側のニーズ調整や必要な説明などを間に入って対応してくれるなどします。
そのため、初めてプロボノに参加する人やNPO活動に関わったことがない方などは、こちらの形態のほうが安心かもしれません。
この方法の場合、ある程度の決まったプロセスがあるので、以下で説明します。
1)説明会への参加と登録
まずは、中間支援団体が開いている説明会に参加しましょう。
プロボノを推進する専門の団体もありますし(サービスグラント、二枚目の名刺、プロボネットなど)、それ以外の中間支援団体がプロボノプロジェクトを実施している場合もあります。
説明会に参加することで、各団体の違いも分かりますし、団体によっては支援先のNPOの紹介もあります。
各団体の案内に従い、ご自身のスキル等や希望に関する登録や申込を行います。
2)NPO団体とのマッチング
スキルや団体のニーズを調整して中間支援団体がマッチングを行います。
ご自身が希望を出したとしても、チーム編成の人数やNPOの希望を考慮して、すぐにプロジェクトが開始できるとは限りませんので、中期的な気持ちで待つことも大事です。
3)プロジェクト開始
チームとプロジェクトが確定したら、キックオフミーティングや改めての説明会を踏まえてプロジェクトが開始します。
実施する内容の検討から始める場合も多いので、チームとNPOとのディスカッションが肝になります。
NPOの目的や希望、やりやすさなどを理解するように意識するとよいかと思います。
4)成果発表
プロジェクト期間が終了した時に、成果発表会などできちんと成果を見える化することが求められます。
ただし期間内に成果を出すことは大切であるものの、そこにとらわれすぎて本質的にNPOが求めていないことに執着してしまったり、負担をかけてしまうのも本末転倒です。
プロジェクトより上段のNPOの目的や優先順位を見失わないようにすることも大切です。
プロボノ活動の事例
では、具体的にどのようなプロボノ活動があるのか、事例で見ていきましょう!
1)中間支援組織でプロジェクトのサポート業務を行った事例
これは、私が社会人2年目で実際に行った例です。
私は中間支援(=NPOを支援するNPO活動)の活動に関心があり、ボランティアをして理解を深めたいと思っていました。
ある中間支援団体に直接ボランティアとして参加させてもらえないか問い合わせ、ちょうどその時に始まった数か月間のプロジェクトにおいて、会議の議事録作成や参加者サポート業務を行いました。
その時は、まだまだ社会人として駆け出しの段階ではありましたが、これもプロボノの一種でした(その頃はプロボノという言葉はまだあまり使われていなかったため、意識していませんでしたが)。
2)NPOマーケティング・プログラムに参加し、営業支援を行った事例
上記の1)が終了した後にもNPO支援のボランティアがしたいと思い、あるNPOマーケティングプログラムにプロボノとして参加しました。
これは、希望するNPOがマーケティングスキルを高め、寄付獲得などに活かすプログラムで、各NPOにプロボノ2名が伴走するというものでした。
私は、本業で法人営業を行っていたので、法人寄付を獲得するための法人営業のサポートとして参加しました。
法人営業の進め方や提案の仕方などをNPOと共に考えていきました。
自分で個別のNPOに問い合わせるのはハードルが高いという場合は、この例のようにプロボノとNPOとのマッチングを行う活動へ参加することも有効です。
3)NPOマーケティング・プログラムで、調査業務の支援を行った事例
上記のプログラムに対して私は法人営業サポートの面で関わりましたが、他のプロボノはそれぞれの専門性を活かしていました。
例えば、本業にてマーケティングリサーチというアンケートやグループインタビューなどで、顧客調査を行っている人もいました。
NPOも、寄付者や支援対象者を理解するための調査を行うことがありますが、その方法をレクチャーしたり、一緒にアンケートを作ったりするなどの支援を行っていました。
このように、プロボノと言っても、自分の職業や業務スキルを活かした様々な関わり方があります。
「自分には専門性という程のものはない」と思っていても、企業などで働いている人であれば何らかの関わり方があり、NPOから求められています。
もちろん、自分のスキルが活かせる業務のタイミングやご縁もあるため、すぐには見つからない可能性もありますが、是非一度探してみてください。
企業からNPOへ転職した多くの人がまずはプロボノを経験していますし、私自身もプロボノの経験が後々のNPOへの就職や企業CSRでの業務に大きく役立ちました。
きっと皆さんのキャリアや人生の広がりに繋がると思います。