NPO・NGOで年収1,000万円は可能なの?
NPOやNGOで年収1,000万円を出している法人はあるのでしょうか。
内閣府の調査によると、NPOの有給職員の1人あたりの人件費は平均234万円でした。年収1,000万円を越える法人はありませんでしたが、最大値は939万円ですので、1,000万円近い年収を出す事例はあるということが分かります(*平成25年『特定非営利活動法人に関する実態調査調査』より)。
【特定非営利活動法人の有給職員人件費・非常勤有給職員人件費(1人当たり)】
(単位:万円)
また、社会的企業・NPO団体130団体が加盟する「新公益連盟」の調べによると、平均年収は383万円。管理職では平均463万円、経営層になると平均574万円となっており、一般職員からポジションが上がるにつれて年収も増えていきます。
これらの数字をみると、NPOをキャリアに選んでも年収1,000万円を越えるのは難しい印象を受けるかもしれません。
しかし、非営利団体・法人で働きながら年収1,000万円以上を叶えている方もいます。そのような方たちは、一体どうしているのでしょう。
非営利団体で社会貢献しながら希望年収を目指す方法
実際に筆者の周りで、NPOで働きながら年収を希望年収に近づけている方たちの事例をご紹介します。
1)NPOで正職員として働きながら副業する
NPOによっては副業ができる団体もあります。
平日の日中はNPOで正職員として働き、終業後や週末は副業に取り組むことで、NPOで働きながら希望年収を叶えている方たちもいます。
希望年収を叶えている方たちは、専門スキルを活かした副業をしている傾向があります。
NPOの規定やワークライフバランスを確認する
副業についての規定はNPOによって異なります。
採用担当者にあらかじめ副業の可否を聞いたり、就業規則を確認したりしましょう。
副業するにあたっては、本人の意志で自由に始められる団体もありますが、事前の申請や審査が必要な団体もあります。
また、「副業の時間をどのくらい確保できるか」も年収に大きく影響します。
ワークライフバランスが整っているかどうか、リモートワークが可能なのかをしっかり確認しましょう。
SNSをチェックして組織風土を把握しておく
副業を含め、フレキシブルな働き方ができるかどうかはSNSからチェックできます。
代表者やスタッフのSNSを見ると、どんな働き方をしているかがわかります。
- 残業や休日出勤をしていないか
- 長時間労働についての言及(「休みたいけど休めない」など)
- 自分の好きなことや、家族との時間を大事にしているか
また、公式ホームページに組織風土や働き方のポリシーを明記しているNPOもありますので、併せてチェックするとよいでしょう。
(参考)「NPOで副業するには?報酬の有無による規定や、求人の見つけ方」
2)複数のNPOで兼業する
複数のNPOで兼業する働き方もあります。
- 正職員としてフルタイムで働くNPOと、パートタイムで働くNPOとで兼業する
- 複数のNPOから業務委託を受ける
- 役員報酬を得られるNPOで役員を掛け持ちする
2の業務委託では、短期間のプロジェクトで専門性の高い仕事を請け負います。
例えば、税理士・会計士や弁護士、社労士などは、インハウスで専門家がいない団体が多いNPO業界ではニーズがあります。
また、マーケティングの知見を活かしてNPOの資金調達をリードする「ファンドレイザー」の業務も注目されています。
雇用形態は、業務委託契約や半年から1年程の契約職員など、団体によって異なります。
専門スキルを求められるため、正職員より給与レンジが高いケースも少なくありません。
3)外部からNPOを支援する、支援会社に就職する
自社のサービスやプロダクトでNPOを支援する企業で働くことでNPOの運営を支え、社会貢献に携わることができます。
例えば、NPO向けにCRMアプリケーションの導入・活用サポートを行っている株式会社セールスフォース・ジャパンなどがその一例です。
ほかにも、NPO支援を行っている企業は多岐に渡ります。Nコレ! – NPO支援コレクション
フリーランスで支援する
デザイナーやマーケター、プログラマーなど、専門職のフリーランサーが二足のわらじでNPOを支援する事例も増えています。
プロボノ(*スキルを活かした無償のボランティア)として関わることも多いですが、財務基盤が整ったNPOでは有償のケースもあります。
4)NPOで何年間か働き、民間企業に転職または独立・起業などする
NPOでの経験は、民間企業で十分に活かすことができます。
即戦力が求められるNPOでは、早い段階から責任あるプロジェクトを担い、スキルアップの機会に恵まれます。
また、NPOはステークホルダー(利害関係者)が多岐に渡ります。
寄付者やボランティア、協力企業、受益者など、様々な方たちと関わるなかで磨かれるコミュニケーション能力は、民間企業へのキャリアアップにも役立つはずです。
独立・起業も可能
NPOで働いてからフリーランスとして独立することで、将来的に年収を上げられる可能性が高くなります。
NPO特有のニーズや組織文化に理解があることはアドバンテージになるため、NPO向けの経営コンサルタントや寄付集めのアドバイザー、組織開発のファシリテーターなどとして独立し、活躍している方たちもいます。
NPOの将来性と年収1,000万円の可能性
アメリカではNPOの経営層は年収1,000万円
アメリカでは、年収1,000万円を叶える団体も少なくありません。
予算が500万ドル(約6億円)から1,000万ドル(約13億円)のNPOでは、事務局長レベルの平均年収は約90,000ドルで、日本円で1,000万円を越えます。
さらに予算規模が大きくなると、1,500万円以上も珍しくありません。
役職があると職員の年収も高くなる
アメリカでは経営層でなくとも、役職がある職員は高い年収を得られています。
- ファンドレイジング・マネージャー・・・約660万円
- 人事コーディネーター・・・約600万円
- マーケティングディレクター・・・約760万円
実際に、筆者の周りにいるアメリカのNPOで働く方たちは、企業で培った専門性を活かし、NPOでのキャリアアップを叶えています。
参照:2022 Nonprofit Salaries Guide: How Much Do Nonprofits Pay Employees?より作成
※日本円は2022年米ド対円相場の平を参考に、120円で計算しています
日本のNPOで年収1,000万円を越えられる将来性は?
NPOの財源の多くは、個人や法人からの寄付が占めています。そのため、安定した寄付収入を得られるかどうかが、NPO職員の待遇改善を左右するとも言えます。
日本の寄付市場は2021年に1兆円を超え、この10年で2倍強に拡大しています。
若い世代の寄付が増えていることも考えると、これからさらに寄付市場は伸びていくでしょう。
日本のNPOで年収1,000万円を実現できる未来はそう遠くないかもしれません。
NPOにキャリアチェンジして年収が下がるケースは少なからずあります。
けれども、企業での経験を活かしたり、副業や兼業を上手く組み合わせたりすることで、年収1,000万円を目指すことは不可能ではありません。
「NPOが優秀な人材を集めるには安定した年収が必要」という社会の意識も広まっています。
社会貢献に取り組むNPOは、魅力的なキャリアになりつつあります。