国際協力の仕事内容や種類
国際協力とは、国境を越えて主に発展途上国や新興国の発展のために支援をすることで、「国際開発」と言うこともあります。
関わっている機関・団体もさまざまで、政府や国際機関もあれば、民間のNGO、また民間企業も大きく関わっています。
そして、海外の現地で働くイメージが大きいかもしれませんが、日本での本部業務が中心の人も多いです。
文系・理系の観点からの仕事の種類
大学生の方だと、文系・理系の区分も気になるかと思います。
国際協力に関わる分野は多岐に渡り、教育、経済、保健医療、都市開発、農業・農村開発、資源・エネルギー、人道支援など含めその他多くあるため、文系・理系のそれぞれの専門を活かした道を選ぶことが出来ます。
採用案件によっては高い専門性が求められ、たとえば公衆衛生など、特定の修士課程(大学院卒)が採用条件になっている場合もあります。
詳細分野は、こちらのサイトの「職務分野」欄が参考になります。
国際協力の仕事ができる機関・団体一覧
それでは、具体的にどのような機関・団体で、どのような仕事があるか見てみましょう。
1)国連などの国際機関
国連(国際連合)は、国際の平和と安全を維持すること、経済・社会・文化・人道的な国際問題を解決することなどを目的として設立され、世界の196か国が加盟しています。
下部機関が多く存在し、たとえば国連環境計画(UNEP)や国連児童基金(UNICEF)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などがあり、業務はそれぞれの機関や案件に応じて企画、プロジェクト運営・管理、調査などがあります。
また専門機関として国連と連携協定を結んでいる、国連食糧農業機関(FAO)や世界保健機関(WHO)、世界銀行グループなどもあり、専門機関以外では国際エネルギー機関(IEA)などの国際機関もあります。
基本的には、ポストが空席になったら採用募集がかけられるためチェックが必要になりますが、若手の採用を促進する外務省のJPO派遣制度や国連のYPP制度があります。
2)国際協力機構(JICA)などの日本政府関連
日本政府関連の仕事としては、国際協力機構(JICA)や国際協力銀行(JBIC)などがあり、また外務省(専門調査員や派遣員)や、その他官公庁(金融庁や環境省)などにも国際協力に携わる業務があります。
JICAは、日本の政府開発援助(ODA)を一元的に担う実施機関です。
プロジェクトを企画、管理するJICA職員としてだけでなく、途上国への技術協力を実際の現場で実現していくJICA専門家や海外協力隊の派遣などの制度もあります。
3)開発コンサルタント
開発途上国におけるプロジェクトを推進するアクターとして重要なのが開発コンサルタントであり、ODA業務などを具体的な技術力をもって実現していく民間企業です。
たとえば、運輸交通や都市開発、環境・気候変動、法制度、教育、保健、ジェンダーなど、企業によってそれぞれの事業分野に取り組みます。
海外駐在もありますし、日本と海外を出張ベースで行き来しながら働くこともあります。
4) NGO
もう一つの重要なアクターとして、非営利組織があります。
法人形態としてはNPO法人や社団法人などがありますが、国際系は慣習的にNGO(非政府組織)と呼ぶことが多いです。
それぞれ団体のミッションに従って、たとえばジェンダーや子ども、環境など、特定分野で国際協力に従事することが多くなります。
寄付等で独自のプロジェクトを行うこともありますが、ODA業務を実施するなど、政府との連携もあります。
5) その他
その他にも、シンクタンクやアカデミックなどの研究職、士業や医療などの専門職、ソーシャルビジネスへの就職や起業、一般企業での環境や環境・国際業務など、さまざまな関わり方があります。
また、少し異なる切り口では、人事や会計、ファンドレイザーなど、あらゆる組織に共通する職務の専門性を付けて関わったり、一般企業などで働きながら副業やプロボノで関わったり、休職中や定年後に国際協力に従事するという人もいます。
国際協力の仕事をするには
もちろん、新卒採用や若手採用もありますが、国際協力の専門分野では基本的にはそのポストに必要な経験や専門性が求められるため、少し長い視点をもつ必要があります。
まずは、インターンシップや海外協力隊で海外経験・業務経験を得ること、何かしらのファーストキャリアを通して経験を得ることで、スタートラインに立つことができます。
※ただし、上記5)その他に該当する業務は、国際協力キャリアの王道とは異なるため、この限りではありません。
具体的な仕事への就き方
具体的な空席募集案件において、どのような経験や要件が求められているかを見ることで、イメージがしやすくなります。
下記サイトから気になる分野を見てみましょう。
このようなサイトからも申し込めますが、特にNGOでは個別団体が発信しているHPやSNS、職員の人づて、インターンから職員への登用なども少なくないため、情報収集や人脈づくりも大切です。
たとえば国際NGOの職員採用ルートについては、以下のような調査結果も公開されています。
給料(年収)平均
就職先が多岐に渡るため年収もさまざまですが、特にNGOなど非営利団体への就職には不安を覚える人もいるかもしれません。
NGOセンサスが報告しているデータによると、最も給料の高くなる50代で年収424万円、最も低い20代では287万円でした。
NGO内でも役職の高低があり、年齢が高くなるにつれ役職が上がっているためと考えられます。
NGO=ボランティアと考える人もいますが、NGOにも有給専従職員は少なからずいて、上記の調査結果から、一般企業と比べてそれほど見劣りするものではないと思われます。
ただ、大企業や国際機関などと比べるとある程度の差があるため、自分の優先度を考慮して選ぶことはできます。
またNGOの中でも、世界的な老舗団体から無償ボランティアのみで構成される団体まで幅広く存在しているので、それぞれの個別団体の状況を確認することが大切です。
あとがき
国際協力は、それぞれの機関・団体へ就職するには門戸が狭く、どのような採用案件が出ているのか、タイミングによっても大きく左右されます。
また就職した後も、その機関や団体に終身雇用される場合もありますが、どちらかというと長きに渡りその時々の自身の経験や希望を考えながら、キャリアを模索し続ける人が多い印象です。
上記で紹介した1)~5)のどれか一つだけということではなく、キャリアの中でいくつか経験する人の方が多いかもしれません。
そのため、キャリア形成は一筋縄ではいかない難しさを感じるかもしれませんが、その分やりがいも大きい分野ですので、まずはできるところから一歩を踏み出してもらえたらと思います。